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初めてのデリヘル:デリヘル嬢の足音:デリヘル嬢「智恵理」

初めてのデリヘル

岡田 達也は、そわそわしながら何度も時計に目線を移していた。
九時四十三分。それと、三十二秒。

電話をしたのが――おおよそ九時二十分。電話をしてから、すでに、二十分が過ぎている。
嬢は、どこから来るのであろうか。
連絡したばかりの、スマートフォンの画面に視線を滑らせる。
呼び出した女性の名前――智恵理、というらしい。仮名だろうが――と顔写真、それから、店名が書かれている。
店の名前には、“新宿”の名前が躍っていた。ああ、そうか。彼女は新宿から来るのか。

岡田が風俗を利用するのは、これが初めてであった。
職業はしがない探偵、日々の生活をするのもやっとである。
家を持つことなど夢のまた夢。出会いも、あろうはずがない。
日々の暮らしは到底満足のいくものではなく、老朽化したアパートの一室で、何の楽しみもなく無為に日々を過ごしている状況だ。
そんな岡田が風俗を利用しようと思ったのは――単なる思い付きだ。
新宿歌舞伎町の、煌びやかなネオンに触発されたのかもしれない。
或いは、日々目にする風俗のチラシに性欲が限界を迎えたのかもしれない。
具体的な理由は、自分でもわからなかった。
わからなかったが、決心はした。

今、新宿デリヘル無料エロ小説恐らくデリヘル嬢が自分の部屋、この汚い部屋へと向かってきているのであろう。
昨日食べたカップヌードルの容器は投げっぱなしだし、布団も二週間は干していない。
風呂だけは掃除しておいたが、お世辞にも清潔とは言い難い状況だ。
デリヘル嬢はいい思いをしないだろうが、気にしようとも思わなかった。
ただ、下腹部に滾る、熱いものを発散できれば、それでよかったのだ。
と、岡田の耳に鉄階段を昇る音がした。

隣の貧乏学生でも、そのまた隣の口うるさい大家でもない、軽快な、若々しい足音だ。
岡田は、すぐそこに待ち人が来ていることを理解した。

デリヘル嬢の足音

呼び鈴が鳴る。

我が家でその音が鳴るのは、数年以来のことだった。
昔は、一生を共にすると誓った女性が鳴らした呼び鈴である。
奇妙な懐かしさを覚えながら、岡田は傾きかけた木造のドアを開く。
その先には、写真の姿となんら変わりない女性の姿が立っていた。

「あの、岡田さん、ですか」
「ああ、うん、そうだよ。入って」
岡田は少しの間、何を言うべきか逡巡してから、女性を――「智恵理」を招き入れる。
彼女は汚らしい部屋に慣れているのか、眉一つ動かさず、ファーのついたコートを脱ぎ捨てた。
化粧はそれほど濃くなく、瞳は丸い。頭髪の色は茶色で、寒さのためか、頬は桜色に染まっていた。マニキュアやイヤリングといった装飾品もしていない。若くは見えないが、それほど年を取ってもいないようだ。

そうやって人を観察してしまうのは、岡田の職業柄である。
怪訝そうに岡田を見ている智恵理から視線を逸らし、数時間前に清掃した風呂場を指し示した。
「とりあえず、お風呂入ったらどうかな」
「一緒に入りますか?」
「いや、」
首を振り、少し考えてから、岡田は言葉を翻そうと思った。

すでに残り時間の計測が始まっていたのなら、大損ではないか。
だがすでに智恵理は風呂場へ入り、シャワーを浴びてしまっていた。
呼び止めるのも恰好が悪い。岡田は奇妙なプライドを胸に、風呂場のドアの前に座り込んだ。

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デリヘル嬢、「智恵理」

「岡田さんは、普段何をされているんですか?」
シャワーの音に混じって、デリヘル嬢の、智恵理の声が聞こえてくる。
透明感のある声だ。今から彼女を抱くのだと思うと、一物が熱くなった。

「探偵だよ。探偵事務所ももってる」
「へえ、すごい。カッコイイですね」
感心したような、そうでいないような声。

彼女の本心はわからないが、岡田は、自分の矮小な自尊心が少しだけ満ちていくのを感じた。
事務所は都市外れの格安ビルだし、恰好がつく職業でもない。ゆえに人に関心を寄せられるのは、久しぶりのことだった。
「ああ、まぁ、ほとんどが浮気調査なんだけどね……」
語尾を小さくして、岡田は呟く。真実を隠したまま胸を張るのは、ばつが悪かったのだ。
「……じゃあ、別れさせ屋みたいなことしてます……?」
思いつめたような声。職業柄、依頼人が抱えている悩みの重さは声のトーンで把握できる。彼女の場合は、随分と重い問題を抱えているようだった。

「別れさせ屋」――聞いたことのない単語だ。あまり、平和な響きではない。
しかし、知らぬ存ぜぬで彼女を撥ね退けてしまうことを、岡田はよしとしなかった。
探偵としての卑小なプライドが、彼女の前では全知を装おうとしていたのだ。
「ああ、もちろん、もちろん。なんでもしてるよ。
人間関係のことならお任せあれ、って感じだよ」
「ほんとう、ですか」
風呂場の扉が、勢いよく開かれる。
裸の智恵理が、岡田の前に現れた。

ふくよかな胸。健康的に肉付いた身体。手入れのされた恥毛――
思わず溜息が漏れる。彼女の身体は、映像で見る裸体よりも美しかった。
「岡田さん、本当ですか」
「え、あ、うん、うん」
「本当に、復縁屋とか、別れさせ屋みたいなこと、してるんですか」

切羽詰まった表情。岡田は彼女の、その表情に見覚えがあった。
ああ、そうだ――浮気調査を依頼しに来る、既婚女性の顔である。
その、張り詰めて、ともすれば破裂しそうな、眉を八の字にし、唇をへの字に曲げた表情を見て、岡田は股間のモノが平静を取り戻していくのを感じていた。